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星野会計事務所 税務ニュースレター No. 97-2 January 21, 1997 このニュースレターは当事務所が独自に選択したトピックをカバーしておりますが、細部には及んでおりませんし、当事務所の意見書としては意図しておりません事をご了承下さい。 「従業員」対「独立契約者」の問題、米国での最近の進展 被雇用者が「従業員」(employee)であるか「独立契約者」(independent contractor,つまり自営業者)であるかの分類は、雇用者と徴税当局との間の長年にわたる論争点となっています。被雇用者が従業員であるとなれば、雇用者は報酬の支払いの度に所得税・社会保障税の源泉徴収および雇用者負担の社会保障税・失業保険の徴税当局への支払いを義務づけられるばかりか、更にその他の福利厚生(フリンジベネフィット)も被雇用者に対して用意しなければなりません。 他方、被雇用者が従業員ではなく独立契約者であるとなれば、雇用者は以上の義務から一般に解放され、今度は被雇用者自身が自営業者として経費を控除した後のネットの所得に対する自己の所得税および社会保障税を自ら予定納税することになります。当然のことながら徴税当局への税支払いは従業員である場合に比較して一般に少額となり、また遅れることになります。これは徴税当局の側からみれば歓迎すべき事ではなく、徴税当局は雇用税税務調査において被雇用者を従業員と扱うべくかけてきますから、雇用者との間で論争に発展する事が多々あります。 1996年小規模ビジネス雇用保護法制定による雇用者救済措置の変更 連邦政府の徴税当局である内国歳入庁(以下、IRSと略)による雇用税税務調査に関し、米国議会は雇用者(納税者)側の暫定的救済措置(セーフハーバー)として1978年財政収入法第530条(Section 530 of the Revenue Act of 1978)を設けましたが、その後1982年税均衡財政責任法(Tax Equity and Fiscal Responsibility Act of 1982)により継続的救済措置となっていました。これがいわゆる「530条の規則」で、その骨子は以下の通りでした。 1. (1)雇用者(納税者)が被雇用者を「非」従業員扱いするにあたって「妥当な根拠」(a reasonable basis)が存在した、(2)当該被雇用者が非従業員であるとの前提で作成した連邦政府への税務申告書について提出を義務づけられているものは1979年以降全て提出している、のであれば1978年以前の年について更正を受けた雇用税を免除する。 2. (1)従業員・非従業員の分類にあたって納税者が妥当な根拠を有している、(2)提出が義務づけられている税務申告書は全て提出している、(3)1978年以降、雇用税の面で当該被雇用者と実質的に同じ立場にいる個人をを従業員として扱っていない、のであれば1979年以降についても雇用税の更正を免除される。 何が「妥当な根拠」であるかについては、530条の規則において、納税者が従業員・非従業員の分類にあたって以下の根拠の内どれかに依拠していたのであれば納税者は「妥当な根拠」を有していたものとしています。 (1) 過去の裁判判例。 (2) 発表されているルーリング(通達の類) (3) 当該納税者に関してIRSが出したテクニカル・アドバイス・メモランダム、あるいはレタールーリング(個別書簡)。 (4) 過去のIRSによる税務調査において、従業員と実質的に同じ立場にいた非従業員被雇用者に対する報酬額に関連した雇用税の更正が無かった事実。 (5) 非従業員として扱われた被雇用者が、雇用されていた産業業種の主要なる部分において非従業員として扱われる事が長年に渡り認められた慣習である事実。 530条の規則の適用にあたってIRSは数々の通達を出していますが、レベニュールーリング87-41では「誰が従業員であるか」に関し「普遍法に基づく従業員」(a common law employee)を判断するにあたって次の20項目を考慮すべき項目として参考に提示しています。 1. 指示の有無(instructions) 2. 訓練の有無(Training) 3. 役務提供の業務全体への融合の度合い(Integration) 4. 個人的役務提供のされ方 (Services Rendered Personally) 5. アシスタントの雇用、監督、報酬支払いの有無(Hiring, Supervising, and Paying Assistants) 6. 雇用関係の継続の有無(Continuing Relationship) 7. 時間設定の有無(Set Hours of Work) 8. フルタイム勤労義務づけの有無(Full Time Required) 9. 雇用者の施設内での作業か否か(Doing Work on Employer's Premises) 10. 作業の順番が決められているか否か(Order or Sequence Set) 11. 作業に関する口頭あるいは書面でのレポート提出義務の有無(Oral or Written Reports) 12. 報酬支払いが時間給、週給、月給であるか否か(Payment by Hour, Week, Month) 13. 雇用者による被雇用者のビジネス費用・旅費負担の有無 (Payment of Business and/or Traveling Expenses) 14. 雇用者による道具・材料等の提供(Furnishing of Tools and Materials) 15. 被雇用者による自己投資の度合い(Significant Investment) 16. 経済的損益を負うか否か(Realization of Profit or Loss) 17. 同時に複数の企業に役務提供しているか否か(Working for More Than One Firm at a Time) 18. 被雇用者が公共一般に対して役務提供できるか否か(Making Service Available to General Public) 19. 雇用者に解雇権利があるか否か(Right to Discharge) 20. 被雇用者が債務を発生させることなく雇用関係を終了する権利があるか否か (Right to Terminate) さて前置きが長くなりましたが、昨年8月に米国議会を通過しクリントン大統領が署名して成立した小規模ビジネス雇用保護法(Small Business Job Protection Act)により上記「530条の規則」の法適用に変更がありました。これはIRSが530条の規則を不当に狭義に解釈して適用しているとの議会の意見を反映したもので、主要な変更点は以下の通りです。 1. 被雇用者が従業員であるか否かの問題を含む雇用税税務調査をIRSが開始するにあたり、納税者に対して530条の規則条項を文書にて提供することにより、530条の規則による潜在的救済を伝えることを新たにIRSに義務づけた。 2. 530条の規則の適用に際しては、普遍法に基づく20項目のテストを無視する。(即ち、被雇用者が普遍法に基づく20項目に照らし合わせて「従業員」である可能性が強くても、530条の規則にある救済措置から除外されることはない。) 3. 非従業員として扱った被雇用者が雇用されていた産業業種の「主要なる部分」については、主要なる部分がその産業業種の25%を越えている必要はない。更に、「長年に渡り」認められた慣習である為には10年間を越えている必要もないし、産業業種の慣行が1979年に存在せず最近に始まったからといって「長年」の慣習から除外されることはない。 4. 被雇用者が従業員であるか否かで論争になった場合、530条の規則適用の上で被雇用者を従業員として扱わなかったのは妥当であるとの一応の証拠(a prima facie case)が納税者側にあれば、今度は挙証責任はIRS側に転嫁する。(但し、挙証責任がIRS側へ転嫁される為には、納税者が被雇用者を独立契約者として扱った事に関してのIRSからの妥当な資料請求に全面的に応じていなければならない。) 5. 納税者がある時点で被雇用者を独立契約者から従業員へと分類替えしたからといって、その前の独立契約者としての期間における530条の規則適用には影響は与えない。 以上は納税者側に立ってIRS側を牽制する法改正でしたが、全てが納税者側に有利になった訳ではありません。例えば、セーフハーバーの一つである過去のIRSによる税務調査において雇用税の更正がなかったという項目に関しては、税務調査が1997年1月1日以降に開始し雇用税がその対象に含まれていない場合には適用されなくなりました。このセーフハーバーは重要な要素であっただけに、納税者にとっては厳しい法の変更といえます。(逆に、1996年12月31日以前に開始した税務調査が雇用税に関連していなくても、雇用税の更正さえ無ければセーフハーバーとして認められます。)
マイクロソフト社、「従業員」対「独立契約者」に関連する福利厚生の責任で敗訴(連邦上級裁判所での裁判) このケースはマイクロソフト社とIRSとの間での係争ではなく、同社で働いていた「フリーランス」の人達と同社との間での係争であります。同社にIRSの雇用税税務調査がかって入りその調査の結果、同社が雇用していたフリーランスの人達が連邦所得税・社会保障税の上で独立契約者ではなく20項目のテストに基づく普遍法上の従業員であったと断定された事に端を発しています。(同社はこのIRSの断定とそれに伴う税務調整には抗議せず同意したと思われます。) そして、このIRSによる身分変更の断定を聞いたフリーランスの人達のうち何人かが原告として、雇用者であった同社を訴えて従業員であれば与えられていた筈の福利厚生(引き出すまで課税が繰延べされる401(k)ペンションプラン及び従業員自社株式取得プラン)を遡って適用するよう要求しました。 同社では、1987年から1990年にかけて各種の福利厚生を享受する「通常」の従業員とは別に、福利厚生を享受できないフリーランスの人達(原告を含む)を雇用していました。この被雇用者達はソフトウェアの試験者、ソフトウェア生産の編集者、校正者、フォーマット作成者、インデックス作成者として同社で役務提供しましたが、同社の労働力として融合化(integrate)され、しばしば通常の従業員と共通のチームで働き、同じ監督者を持ち、従業員と同様な機能を果たし、勤務も同じ時間帯でした。 しかし、この被雇用者達は同社の給与部門からその報酬が支払われるのではなく、請求書を購買部門に提出して受取っていました。また、雇用に際しては各種の福利厚生を享受する資格がない事を同社より伝えられ、自分達は自営業の独立契約者でありその所得税、社会保障税、保険、その他の福利厚生は自分で責任を持つとの文書にも署名させられていました。 原告の訴えに対し連邦地方裁判所(U.S. District Court)は、マイクロソフト社を支持する判決をしました。原告側はこれを不服として控訴し、昨年10月3日に第9巡回区連邦上級(控訴)裁判所(U.S. Court of Appeals for the Ninth Circuit)は前判決を覆し原告を支持する判決をしました。 401(k)プラン マイクロソフト社の401(k)プランは、少なくとも同社で6カ月以上雇用され、同社の給与台帳に載っている18歳以上の普遍法に照らした従業員に参加資格を与えていました。フリーランスの被雇用者達は福利厚生を享受する意図は初めから無かったし、給与台帳にも載っていなかったし、報酬支払いも購買部門からであった故に401(k)プランに参加する資格は無かったと同社は主張しました。 しかしながら、福利厚生を享受する意図について上級裁判所は主観的な判断の意図は強制力を持たないとし、当該被雇用者達は普遍法に照らした従業員であるので、同社による身分についての意図は重要な要素とはならないと同社の主張を退ぞけました。更に、給与部門から報酬が支払われていなかったとする同社の主張に対しても、それは同社が当該被雇用者達の身分について元々間違った解釈をした為だとしています。 従業員自社株式取得プラン 歳入法423条に適格の同社従業員自社株式取得プランは、原告を含めた全ての普遍法に照らした従業員に参加資格を与えている筈だと原告側は主張しました。これに対し、マイクロソフト社は従業員には歳入法423条を強制執行させる個人的な権利は無いし、採用時に福利厚生を享受しないとの旨に同意していたと反論していました。 上級裁判所は同社の主張をここでも退ぞけました。歳入法423条は従業員に対して強制適用させる個人的な権利は与えないかもしれないが、同プランにある約定は同社の普遍法に照らした従業員全員に参加を呼び掛けるものとなり、従業員に同プランを強制適用させる権利を実質的に与えていたとしました。また、採用時に福利厚生を享受しないとの旨に書面で同意していたとの主張にたいしては、全ての従業員を対象とするという意図に沿う為には原告達を除外する事はできないとし、もしそうすれば歳入法423条への税務上の適格ステータスも失われてしまうと、上級裁判所は結論づけました。 今回のケースでは争点になっていませんでしたが、被雇用者を間違って独立契約者として分類してしまうと、各種の税務上恩恵が認められた福利厚生プランが税法上「非」適格になってしまう恐れがあります。 ooooOOOoooo
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Copyright © 1998 Shoji Hoshino, CPA
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