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星野会計事務所

税務ニュースレター

No. 99-3 June 14, 1999

このニュースレターは当事務所が独自に選択したトピックをカバーしておりますが、必ずしも細部には及んでおりませんし、当事務所の意見書として意図しておりません事をご了承下さい。 

ニューヨーク市への通勤者に対する勤労所得税が7月1日より廃止但し、ニューヨーク州民のみに適用 

現在ニューヨーク(NY)市の非居住者でNY市への通勤者に対し、そのNY市勤労所得に0.45%の市非居住者稼得所得税(New York City Nonresident Earnings Tax)が課されていますが、同税を廃止するNY州議会の決議を受け、ジョージ・E・パタキNY州知事が517日に法案に署名したことにより、廃止が71日に実効となります。但し、同税の廃止はNY州居住者でNY市へ通勤する者に対してのみの適用で、ニュージャージー(NJ)州、コネチカット(CT)州などからの通勤者には適用されていません。 

実務的には、NY州居住者でNY市に通勤する従業員については、雇用者は71日以降の初めての給与計算から同稼得所得税の源泉徴収(つまり給与からの税金天引き)が免除されることになりました。免除の対象となる月給システムの従業員で月当たりのグロス給与が、例えば$3千なら$13.50$5千なら$22.50$1万なら$45だけ月々余分に現金を手にすることができることになります。NY州税務当局では既に「重要ノーティス」(Important Notice:TSB-M-99(4)(I))NY州の雇用者に配布し、雇用者に免除の実施に伴う手続きを以下のように説明しています。 

1999630日以前に雇用された従業員

今年630日以前に雇用された従業員(星野注:つまり今現在既に勤務している従業員)については、上記NY市稼得所得税の源泉徴収免除が適用されるか否かは、次の3条件のどれかに合致する場合としている:(1)雇用者が保持している源泉税などの税金関連書類にある従業員の住所が、NY市外であるがNY州内である場合、(2)雇用者は従業員についての記録としてフォームIT-2104.2NY市非居住証書」(City of New York Certificate of Nonresidence)を有しているが、199971日の時点で同従業員についてフォームIT-2104.1NY州非居住・源泉税配賦証書」(City of New York Certificate of Exemption from Nonresident Earnings Tax Withholding,従業員の現住所がNY市外にあるもののNY州内にあることを証明する書類)を有していない場合、(3)従業員が新たなフォームNYC-2104ENY市非居住者稼得所得税免除証書」(City of New York State Certificate of Exemption from Nonresident Earnings Tax Withholding)を提出する場合。

199971日以後に雇用される従業員

今年71日以後に雇用される従業員(星野注:つまり今後採用の従業員)で、NY市外に居住しているがNY州内に居住しており、NY市内での勤労所得が発生する予定の従業員については、NY市稼得所得税の源泉徴収免除のためには、従業員が記入、署名したNY市上記の新フォームIT-2104.1NY州非居住・源泉税配賦証書」の雇用者への提出が義務付けられる。

今後の動向:上記で明らかなように、今回のNY市稼得所得税免除措置適用はNY州内居住者に限られているが、これはクリスチーン・トッド・ホウィットマンNJ州知事やジョン・G・ロウランドCT州知事、更にはNY州へ通勤するNJ州・CT州の弁護士が、NY州の最高裁判所へ既に差別扱いの「憲法違反」として訴訟を起こしており、違憲としての判決が出るのは間違いがないと予想されています。しかし、その時点まではNJ州やCT州からの通勤者に対するNY市稼得所得税の源泉税徴収は継続されることとなります。

資料:上記のノーティス、フォームなどはNY州税務当局のウェブサイトhttp://www.tax.state.ny.usにアクセスすれば簡単に入手することが出来ます。(個々については、ノーティスはhttp://www.tax.state.ny.us/PDF/memos/income/M99_4i.PDF、新フォームNYC-2104Ehttp://www.tax.state.ny.us/pdf/1999/wt/it2104e_1999.pdfでアクセス出来ます。) 

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IRS(米国国税庁)の税務調査、近年は法人・個人ともに減少

--シラキューズ大学情報センターの調査結果 

シラキューズ大学関連のデータ収集・研究・配賦組織であるTRAC(Transactional Records Access Clearinghouse 取引記録アクセス情報センター)が、IRS(Internal Revenue Service 内国歳入庁=米国の国税庁に該当)、法務省(Justice Department)、連邦政府下の裁判所(federal courts)からデータを取り寄せた所、税の強制執行活動(個人税務調査、法人税務調査、租税詐欺行為に対する刑事告発)が近年相当に減少していることが判明しました。以下はそのハイライトです。

 

 

 

1 IRSによる個人所得税申告書対面税務調査の年度別推移 

年度 提出された申告書数 歳入庁職員の税務調査件数 税務調査官の税務調査件数 両方の合計 全体に対する調査の%
1981 93,052,000 289,507 1,193,079 1,482,586 1.59
1982 94,013,000 285,526 1,066,537 1,352,063 1.44
1983 95,419,000 277,945 1,001,865 1,279,810 1.34
1984 95,541,300 276,182 859,351 1,135,533 1.19
1985 96,496,900 332,574 810,943 1,143,517 1.19
1986 99,529,000 298,943 732,456 1,031,399 1.04
1987 101,750,800 317,525 610,439 927,964 0.91
1988 103,251,000 352,808 532,326 885,134 0.86
1989 107,029,000 242,983 542,664 785,647 0.73
1990 109,868,400 202,570 516,749 719,319 0.65
1991 112,304,900 200,735 499,886 700,621 0.62
1992 113,829,200 210,166 536,640 746,806 0.66
1993 114,718,900 250,712 505,539 756,251 0.66
1994 113,754,400 364,016 456,216 820,232 0.72
1995 114,683,400 338,605 458,880 797,485 0.70
1996 116,059,700 252,430 509,420 761,850 0.66
1997 118,362,600 209,781 505,834 715,615 0.60
1998 120,342,400 168,054 383,366 551,420 0.46

資料:IRS(内国歳入庁) 各地域で行われた通常の税務調査以外の国際税務調査も含む。98年度の数字は最終ではない。97年以前の数字には対面ではなく「書面」だけによる通信調査も含まれている。かかる通信調査は98年に16,341件あった。

個人の税務調査 

「表1」にありますように、個人所得税申告書の提出総数が1981年には9,300万だったのが、1998年には12,034万と、20年近くの間に30%近くも増加した一方で、税務調査の対象となったパーセンテージが1981年の1.59%から毎年減少し続け、1998年には0.46%3分の1になり近年最低パーセンテージとなっています。(中でも、1997年の0.60%から1998年の0.46%への減少は1年間の減少としては大きい。)

 

2 IRSによる個人所得税申告書対面税務調査の年度別推移 

                                                                                    税務調査対象%           

                                                                _________________________ 年度              

申告書の種類/所得水準

98

97

96

95

94

93

92

書式1040/1040Aの申告書全て

0.46

0.61

0.66

0.70

0.72

0.66

0.66

TPI<$25,000の書式1040A

0.27

0.35

0.41

0.50

0.56

0.46

0.38

TPI<$25,0001040A以外の申告書

0.39

0.56

0.61

0.65

0.60

0.47

0.53

$25,000<TPI<$50,000の申告書

0.33

0.45

0.51

0.45

0.40

0.46

0.48

$50,000<TPI<$100,000の申告書

0.39

0.54

0.59

0.50

0.51

0.66

0.79

TPI>或は=$100,000の申告書

1.13

1.51

1.70

1.53

1.78

2.49

2.90

別表CTGR<$25,000の申告書

1.55

2.12

2.36

3.85

3.94

2.02

1.45

$25,000<別表CTGR<$100,000の申告書

1.44

2.04

1.95

2.24

2.63

2.07

1.81

別表CTGR>或は=$100,000の申告書

2.85

3.44

3.15

2.74

3.07

3.36

3.36

別表FTGR<$100,000の申告書

0.59

0.81

0.84

0.77

0.96

0.89

1.01

別表FTGR>或は=$100,000の申告書

1.05

1.63

1.83

1.53

1.31

1.77

2.03

TPI=ポジティブの所得のみの合計所得   TGR=総所得

(星野補足:別表C(Schedule C)は自営業者の損益を計算する書式で、自営業者は損益を正しく報告していない可能性が高いとの理由で、調査の対象とされる率が高いといわれている。別表Fは農業従事者の損益を計算する書式で、これも自営業者と同じく調査の対象とされ易いといわれている。) 

「表2」は、個人税務調査を所得別に見たパーセンテージの推移を示しています。真中にあるTPI(ネガティブの所得を含まず、ポジティブの所得のみの総計)$10万以上の一般に「高額所得者」といわれる層の税務調査パーセンテージを見ますと、92年の2.9%98年には1.13%へと過去7年間に半分以下へと大幅に減少しております。他方、別表Cにおける収入が$10万の自営業者に対する税務調査パーセンテージを見ますと、92年の3.36%98年には2.85%へと減少しているものの大幅な減少となっていません。 

法人の税務調査 

「表3」は法人税の税務調査の推移を示しています。法人税申告書書式「1120」全体の税務調査は、92年の2.90%から98年の2.04%へと減少はしていますが、それ程大きな減少とはなっていません。しかし、資産別に見てみると、資産の大きい法人ほど税務調査対象パーセンテージが減少しているのが分かります。巨大企業といえる資産が$25千万以上の法人について見ますと、税務調査パーセンテージはなんと92年に54.63%(半数強)だったのが、98年には37.27%(3ぶんの1強)に減少しています。 

3 IRSによる法人税申告書税務調査の年度別推移

 

                                                                                      税務調査対象%           

                                                                    年度                 

申告書の種類/所得水準

98

97

96

95

94

93

92

書式1120の申告書全て

2.04

2.62

2.28

1.96

2.13

2.97

2.90

貸借対照表の欠落した申告書

0.86

1.05

1.02

0.89

0.94

1.25

1.14

資産<$250,000の申告書

0.75

1.16

0.99

0.75

0.78

1.29

1.18

$250,000<資産<$1百万の申告書

2.49

3.49

2.71

2.14

2.42

4.03

4.00

$1百万<資産<$5百万の申告書

6.35

7.72

6.57

5.96

7.00

9.59

9.93

$5百万<資産<$1千万の申告書

13.44

15.98

13.95

14.72

15.66

19.31

18.78

$1千万<資産<$5千万の申告書

17.74

19.97

19.67

19.61

22.20

23.26

23.20

$5千万<資産<$1億の申告書

17.53

19.25

20.75

21.49

24.29

25.38

28.48

$1<資産<$25千万の申告書

19.00

22.53

26.78

27.78

30.63

32.28

31.31

資産>或は=$25千万の申告書

37.27

45.86

48.38

50.92

54.68

55.52

54.63

 

連邦政府による租税詐欺行為に対する刑事告発 

IRSが税法の悪質な違反があると判断した場合は、法務省に依頼して刑事告発をしてもらうことになります。刑事告発の件数も上記の税務調査と同じく相当数減少しています。「表4」は81年から98年の間の20年近くの件数の推移をしめしていますが、81年には1,431件もの刑事告発があったのが98年には766件と、約半減しています。 

4 連邦裁判所における租税刑事告発の推移:1981年度-1998年度

年度

租税刑事告発の総件数

1981

1,431

1982

1,185

1983

1,060

1984

1,339

1985

1,361

1986

1,547

1987

1,550

1988

1,393

1989

1,190

1990

1,206

1991

1,066

1992

1,015

1993

1,011

1994

931

1995

850

1996

847

1997

873

1998

766

TRACでは、IRSによる税務調査などの強制執行活動の近年の減少は、IRSそのもの規模縮小が最大原因としています。例えば、税務調査担当の歳入庁職員および税務調査官の人数は、89年には19,813人だったのが、98年には15,780人に減少しているとTRACは報告しています。

(星野注:TRACのこの報告はインターネット(http://www.trac.syr.edu)で入手できます。但し、登録(Registration)が必要ですが、登録費は無料です。)

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政府会計基準審議会、抜本的な新基準を発表

政府会計基準審議会(GASB=Government Accounting Standards Board、州政府、地方政府・自治体の財務会計・報告基準を設定するため1984年に設立された7人の委員による民間セクターの組織)は、今年610日、今までで最も包括的な政府会計基準を発表することに審議会のメンバー全員が一致しました。新基準により、今後の州・地方自治体からの市民・住民に対する報告に大きな変化が予想されます。新基準の大きな特徴としては以下があげられます。 

  1. 州政府・自治体の財務報告書には、今回初めて市民・住民に対する役務サービス提供に伴う費用全額(full cost of providing services to its citizens)についての情報が開示されることになる。

  2. これも今回初めてだが、橋(bridges)、道路(roads)、嵐予防下水設備(storm sewers)、等々の政府・自治体のインフラストラクチャー資産(infrastructure assets)についての情報も開示されることになっている。

  3. 財務報告書には、州政府・自治体の財務実績(financial performance)について幹部による記述分析(managements narrative analysis)も義務づけられることになっている。

トム・L・アレン同審議会会長は、新基準の特徴を以下の様に説明しています。 

bullet

新基準は政府・自治体の財務報告にとって画期的なものである。新基準が出るまでは、市民・住民は州あるいは地方自治体の財務について一箇所だけでは包括的な状況を把握することが出来なかった。新基準の導入により、当年度の歳入が当年度のサービス提供費用を満たしているのか、あるいは次の世代に費用が転嫁されるのか、道路や橋などにどの程度投資されているのか、自治体運営の水泳プールは税金で賄われているのか、それとも入場料で運転資金が賄われているのか、等々の自治体が集めた税金の使途について今まで以上に明瞭な全体像が把握出来るようになる。

bullet

現状の政府・自治体の財務報告は政府・自治体のファンド(funds)が中心事項となっており、それに伴う活動や歳入の原資についていくらかの情報が提供されることが意図されている。しかし、実際にはファンドの数は2つから200、あるいはそれ以上もあり、個別の情報を総合することが非常に困難である。新基準のもとで作成される財務報告は主要なファンドについての情報提供を豊富にするばかりでなく、政府・自治体の全体像の観点から財務情報を提供することになる。

bullet

新基準で作成される財務報告書であれば、政府・自治体の財務状態が上向きなのかそれとも悪化しているのか、についても判断材料となる。また、ある特定の州への移転を考慮している会社にとって、新基準の財務報告書はその州についての重要な情報を提供することになるであろう。市議会の議員達にとっても様々な政策決定の持つ長期的、短期的な意味あいをより良く理解する助けになるであろう。投資家達にとっても、金融マーケットに参加している自治体の財政状態について、より良く理解する助けとなるであろう。それから、市民・住民にとっては、自分達が選出した自治体の首長や議員達の財政活動の健全性を評価するにあたって助けになるであろう。

bullet

現在の所、年次財務報告書にはインフラストラクチャーについての情報が全く含まれていないので、政府・自治体については不完全な像しか得られていない。例えば、ある州政府が州内のハイウェイ整備という特定の目的のため公債を発行すると決定した場合、現行の財務報告書には公債が負債として表示されるものの、それに対応する資産は一切表示されることがない。新基準ではこういう点を是正し、更なる全体像が提供出来るようになるであろう。

新基準の適用ですが、大規模の州・自治体については2001616日以後の開始年度、中規模の州・自治体についてはその1年後、小規模の州・自治体については更にその1年後、が実施の時期とされています。 

星野コメント:日本でも地方自治体の財務状況が不透明であるとして、地方自治体の財務報告の改善が問題になっています。ここ米国での地方自治体の財務報告は日本に比べれば進んでいるものの、民間の企業会計に比べるとやはり不透明な部分が存在しており、今回の新基準はそれを改善するものとして注目されます。

(注:この記事の主な情報はNY州公認会計士協会610日付け報告によっております。) 

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Copyright © 1998 Shoji Hoshino, CPA
最終更新日: 2008/01/14