当事務所ニュースレター97年6月27日号、98年1月16日号でもIRS(内国歳入庁、米国の国税庁に該当)の権力乱用に対する論議をお伝えしましたが、IRSを牽制するIRS改革法案(The
IRS Restructuring and Reform Act of 1998)が6月25日に米国議会下院(賛成402票対反対8票)、7月9日に上院(賛成96票対反対2票)を通過した後、7月22日にクリントン大統領が署名することにより正式な法律として制定されました。法の主要点は以下の通りです。
IRSの組織改革?IRS長官に対し、IRS組織改革案の実施を義務づけた。従来の地域別に基づいた組織の解消、あるいは大幅な改変、同様な必要事項を持っている納税者のグループに対し対応出来るような部門の創設、IRS内部での独立した係争処理機能の確保、がこの改革案に含まれねばならない。
IRSの目的?一般大衆への奉仕を強調するため、IRSがその目的(mission)を再点検し改定すること。
IRS監視委員会の設置?9人の委員で構成される監視委員会設置が義務づけられた。委員会は、大統領が指名し上院が同意した6人の民間人、財務省長官(Secretary
of the Treasury)が指名した委員1名、IRS長官(Commissioner of the IRS)が指名した委員1名、大統領が指名した連邦職員である委員1名、により構成される。任期は初代委員を除き5年間とする。
IRS長官その他の幹部役人の選出?上院の示唆と賛成のもとに大統領が「IRS長官」(5年任期)及び「IRS上席法律顧問」(Chief
Counsel)を指名、IRS長官及び監視委員会との協議の上で財務省長官が「納税者代理主張者」(Taxpayer
Advocate)を指名すること。
財務省に2人の「総監視人」(Inspector General)を置くこと。
より柔軟な人事?IRS職員の不法行為による免職措置を可能とすること、税徴収の結果を示す記録の使用によるIRS職員の業績評価を禁止すること、IRS職員訓練案を上院財務委員会(Committee
on Finance)と下院歳入委員会(Committee on Ways and Means)にIRS長官が提出することの義務づけ。
挙証責任の転嫁?納税者が自己の税責任額について信頼のおける証拠を用意できれば、所得税、遺産税(相続税)、贈与税、世代間譲渡税についての法定での係争については、財務省長官に挙証責任(IRSの側)があるものとする。但し、そのためには納税者は以下を満足していることをまず証明しなければならない。(1)現行の法にある証拠書類の「提出」及び「保管」義務を遵守していること。(2)IRSからの妥当な(reasonable)「会見」「面接」「証人」「資料」「情報」請求に対し、協力して来たこと。(3)納税者が「個人でない」場合、弁護士費用賠償のための純資産制限に適格であること。(例:法人・パートナーシップ・トラストの場合、純資産が$7百万を超過しないこと)
顧客の情報秘匿権利の拡大?連邦税上その代理権を認可されている個人が納税者に対して行った税務アドバイスについては、非刑事裁判の場合であれば秘匿権利が弁護士以外の会計士などにも適用されることとなった。
損害賠償--連邦税の徴収において、IRS上級職員・職員が歳入法あるいは財務省規則を怠慢により無視していた場合、納税者はその蒙った民法上の損害につき、$10万までの損害賠償を受けることが出来る。但しIRSの職務機能における単なる不注意による間違いよる損害は賠償の対象とならない。
罰金と利息の計算中止?申告を義務づけられている期間に税務申告をした納税者に対し、
(1)申告書の提出期限日、あるいは(2)納税者が申告書を提出した日、のどちらか遅い方の日から開始して18ヶ月(2004年1月1日以降に開始する年度からは1年)以内にIRSが納税不足の通知書を送付しなかった場合は、18ヶ月(同上、1年)を超える期間に対する罰金や利息の発生計算を中止する。IRSが納税者に不足税支払いの要求通知書を送付してから22日目から利息及び罰金は復活する。
潔白な配偶者の救済?夫婦合算申告をした一方の配偶者が税の過少申告について知らなかった、あるいは知る理由がなかった場合で、その後離婚あるいは少なくとも12ヶ月は別居していたならば、自分に該当する税の不足に自分の責任を限定する「選択」をすることが出来ることとなった。但し、自分に該当する税額の配賦計算についてはその挙証責任を負う。
納税不足と納税過払いの利息計算?同じ期間に納税者の納税不足と納税過払いが存在する場合、従来IRSはそれぞれ別の利率(不足に対し高い利率)を適用していたが、同等の額については利息がネットでゼロとなることを義務づけた。1998年7月23日以降から適用。
税務申告の電子的提出--2007年には全ての申告書の内、少なくとも80%の申告書が(紙の使用によらない)電子的提出によってなされるのを目標とする。