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星野会計事務所

税務ニュースレター

No. 97-5 August 22, 1997

このニュースレターは当事務所が独自に選択したトピックをカバーしておりますが、必ずしも細部には及んでおりませんし、当事務所の意見書として意図しておりません事をご了承下さい。 

16年ぶりの減税施策「納税者救済法」成立する 

1997年納税者救済法」法案(Taxpayer Relief Act of 1997)が、今年7月31日に上下両院を通過し、8月5日にはクリントン大統領の署名を得て法として成立しました。同法は5年間に渡って1,516億ドルの減税を予定し、1981年に当時のレーガン大統領が成立させた「経済復興税法」(Economic Recovery Act of 1981)以来、16年ぶりの減税施策です。但し564億ドルの増税も盛り込まれていますので、ネットでは952億ドルの減税となり、経済復興税法での7,500億ドル大型減税に規模は及びません。 

 今回の法では、79の項目について大統領が個別に拒否できる権限(line item veto authority)が新たに与えられており、既にクリントン大統領は署名の後、ニューヨーク州に対するメディケイドに関する条項など、3つの条項について拒否権を行使し、その部分については無効になっています。 

 法の内容は多岐に及んでおりますので、このニュースレターでは在米日本人、日系人、日系企業に関連すると思われる主要項目に絞ってご紹介致します。 

個人関連 

1.キャピタル・ゲイン税の削減--1997年5月7日以降の売却から適用 

 投資資産(株券・債券など)売却に伴う長期キャピタル・ゲイン売却益に対する最高税率が、従来の28%から20%へと削減された。「長期」とは従来12ヶ月以上の保有を意味していたが、7月29日以降は18ヶ月以上保有を意味することとなった。但し、今年5月7日から7月28日の間での売却については、経過措置として保有期間が12ヶ月を超えていれば18ヶ月未満でも長期と見なされる。 

 一方、個人所得税の適用税率が15%の税率の範囲にある個人納税者(つまり、1997年でいえば、課税所得が夫婦合算申告者の場合$41,200[979月星野訂正]以下、独身者の場合$24,650以下など課税所得が少額であった個人)については、更に長期キャピタル・ゲイン税率が10%と低減された。 

 更に、5年以上保有の資産については、もっと低い税率が適用となる。2001年1月1日以降に「取得」した資産の売却については18%の長期キャピタル・ゲイン税率が適用される。また、2001年1月1日以降に「売却」した資産が5年以上の保有であり、かつ納税者の所得税適用税率が15%である場合、8%のキャピタル・ゲイン税率の適用で済むのである。 

 例外:(1)美術品、貴金属などの「収集品」(Collectibles)の売却益に対しては、以上の低減キャピタル・ゲイン税率が適用されず、従来通りの28%の税率が引き続き適用となる。(2)不動産の売却益のうち過去に損金計上した減価償却[9811月星野追記:9757日以降に損金計上された減価償却の合計額]に対応する額については、25%の税率が適用となる。(3)「小規模ビジネス株式」(small business stock)の売却益については、従来通り、50%までの非課税が許されるかわりに税率は28%に留められる。(即ち、最高で14%の実質税率。) 

 AMT税(Alternative Minimum Tax)上の扱い:通常の税計算とは別に計算するAMT税の上では、上記の新たなキャピタル・ゲイン低税率は税優遇項目と見なされず、AMT税計算でも同じ税率が適用されることとなった。それ故、AMT税の対象になっている納税者にとっては、投資の対象をキャピタル資産に変更してゆくのが望ましいこととなった。 

2.主たる住居の売却益に対する優遇措置の変更--1997年5月7日以降の売却から適用 

 主たる住居の売却益については、従来は、(1)2年以内に買換えを行い、旧住居の売却価格以上の価格で新住居を取得していれば、売却益を繰り延べする(つまり、新住居の税務簿価=新住居購入価格マイナス旧住居売却益、とする)措置、(2)売却時に55歳以上の納税者なら、一生に一度の選択であるが、売却益の内$12万5千(夫婦個別申告者は$6万2千5百)迄は非課税とする措置、の二つの優遇措置があった。 

 今回の法改正により、この二つの措置は廃止となり、その代わり、売却益の内夫婦合算申告者(売却時)については$50万、独身者(売却時)については$25万、迄を非課税とすることの一本化となった。新しい規則は、適用した後また2年経てば適用することが何度でも出来る。(住居の売却あるいは売買契約の締結が、今年5月7日から8月4日の間にあった場合は、納税者は従来の規則か新しい規則か、どちらかを選択出来る。) 

 注意:(1)この優遇措置変更は、大抵の納税者にとっては恩恵を受けることになるが、長い期間に渡る繰延べ益が$50万(独身者は$25万)以上も累積している納税者は、売却益の内$50万(独身者は$25万)を超過する分に対して20%のキャピタル・ゲイン税率を適用して算出した税の支払いを余儀なくされることとなった。(2)住居の売却「損」が出た場合は、残念ながら、他の所得を相殺するなどの恩恵が依然として与えられていない。 

3.個人退職口座(IRA=Individual Retirement Accounts)の拡大--1998年1月1日から適用 

 従来のIRAに加えて、新たに「ロスIRA(Roth IRA)と呼ばれるIRAと、「教育IRA」が設けられた。 

ロスIRA:これは提唱者である上院財務委員会のロス委員長の名前から取ったもので、(従来とは異なり)拠出する元となる所得自体は課税されるものの、拠出金がその後生み出した所得は引き出される迄は非課税であり、また、70.5歳に達した時に強制される引き出しが最低いくらでなければならないという規則はない。更に、適格の引き出し(引き出しが最初の拠出以後5年以上経過しており且つ59.5歳以降である、或いは死亡、身体障害、初めての主たる住居取得のための引き出しである場合、適格となる)であれば、引き出しに含まれている所得は非課税となる。拠出額は、$2千から従来のIRAへの拠出を差し引いた額を上限とするが、調整後総所得(AGI=Adjusted Gross Income)が$15万(夫婦合算申告者)あるいは$9万5千(独身者)を超過すると、許される拠出許容額が漸次削減され始め、$16万(夫婦合算申告者)あるいは$11万(独身者)になると全く拠出が出来なくなる。一方、1999年迄の間は、AGIが$10万以下の納税者については、見なし引き出し資産を所得として計上し、その税を4年に渡って支払えば、従来のIRAからロスIRAへ資産を移管することが許される。 

教育IRA:子弟の大学教育費用のため新たに設けられたこのIRAは、上記のロスIRAと同じく、拠出する元となる所得自体は課税されるものの、拠出金がその後生み出した所得は引き出される迄は非課税であり、適格教育費用のための引き出しであれば引き出しの時も非課税である。適格教育費用を超過した引き出し部分は、課税されるのみならず、10%が罰金の対象となる。拠出は子供一人当たり$500迄の計算で許されているが、AGIが夫婦合算者については$15万、独身者については$9万5千、を超過すると漸次拠出許容額が削減される。ある子供のために設けた教育IRAは、同じ家族の他の子供の教育IRAに移管することが許されているが、子供が大学に行かない場合はその子供が30歳になる時に引き出さねばならない。 

 他方、従来のIRAにも以下の規則変更、追加があった。 

 (1)IRAへの拠出については、雇用主の提供する退職プラン(例えば、401(K)プラン)に参加、自営業者なら自らの退職プランに参加している場合、その年に課税されないIRAへの拠出額は、AGIが夫婦合算申告者については$4万、独身者については$2万5千、を超過すると削減されるという制限があるが、新たな規則では、制限の目安となるAGIの額を漸次引き上げ、より多くの納税者が拠出出来るようになった。例えば、夫婦合算申告者については削減の出発点となるAGIの額が1998年から2007年にかけて$8万迄、独身者については1998年から2005年にかけて$5万迄に引き上げられることとなった。 

 (2)本人が退職プランに参加していなくても配偶者が参加しており夫婦合算によるAGIが$5万を越えている場合、本人によるIRAへの拠出はやはり上記と同様な制限が加えられていたが、1998年以降は二人のAGIが$16万を超過しない限りは、この制限が課せられないこととなった。これ故、例えば本人が働いていない場合、配偶者が退職プランに参加していても、二人のAGIが$16万以下であれば、1998年以降は最高$2千迄IRAに拠出出来ることとなる。 

 (3)IRAからの引き出しについては、59.5歳以前に引き出すと10%の罰金が課されるが、もし引き出された資金が(a)初めての主たる住居購入のため(但し$1万迄)に使用されるか、(b)適格教育費用のために使用される、のであれば罰金は課されないことになった。 

4.子供税額控除(Child Tax Credit)--1998年1月1日から適用 

 17歳未満で扶養家族の一員である子供一人一人につき、1998年は$4001999年以降は$500の税額控除(所得を減少させる控除ではなく、税金を直に減少させることの出来る控除)が与えられることになった。但しこの税額控除も、夫婦合算申告者についてはAGIが$11万(独身者や独立世帯主については$7万5千、夫婦個別申告者については$5万5千)を超過するごとに、超過額$1千ごとに$50の割合で削減されてしまう。 

5.ホープ奨学税額控除(Hope Scholarship Tax Credit)--1998年1月1日以降から開始する学期に対して同日以降の費用支払いに適用 

 この税額控除は、高校以上の教育の内、最初の2年間だけの適格授業料及び関連費用(登録費は含むが、食事代や宿泊費は含まない)に対して適用を受ける。大学の最初の2年間につき、各家族は各学生一人あたり最高$1、500(授業料$1、000の100%迄、と関連費用$1、000の50%迄の合計)の税額控除を権利要求することが出来る。 

 納税者、扶養家族のための費用が税額控除の対象となるが、単位が認定される学校(an accredited institution)に少なくとも半分の時間は費やす学生として学籍登録していなければならない。この税額控除も、夫婦合算申告者のAGIが$8万(独身者は$4万)を超過すると削減され始め、$10万(独身者は$5万)に達すると全く取れなくなってしまう。また、前述の教育IRAからの引き出しで教育費用が支払われた場合は、このホープ奨学税額控除は使うことが出来ない。 

6.生涯学習税額控除(Lifetime Learning Credit)--1998年7月1日以降から開始する学期に対して同日以降の費用支払いに適用 

 これは上述のホープ奨学税額控除が得られない場合に、適用される可能性があり、適格教育費用の内最初の$5千に対して20%(2003年以降は最初の$1万に対して20%と増加)が税額控除として使用出来る。この20%税額控除は、大学3年生、4年生、大学院生、職業技術研修生を対象とすることが出来るし、納税者には自分達の希望する仕方でこの税額控除を何年かに分割をする選択が与えられている。 

 この税額控除も、ホープ奨学税額控除と同様に、教育IRAからの引き出しで教育費用が支払われた場合は使用出来ないし、AGIによる制限を受ける。 

7.学生ローン支払い利息の損金計上--1998年以降の支払いから適用 

 納税者、配偶者、扶養家族が高等教育を受けるために借入れたローンに対する1998年以降の支払い利息については、最高で年間$1千まで税務申告書の所得調整項目(個別控除項目としてではなく)として損金扱い出来ることとなった。この損金額は、その後1999年には$1千5百、2000年には$2千、2001年以降は$2千5百と増加されることになっている。 

 但し、損金の対象となるのは、最初の60ヶ月の利息支払いについてだけであり、その該当個人が誰か他の個人の税務申告での扶養家族になっている場合は適用されない。また、この損金もAGIが夫婦合算申告者については$6万(独身者については$4万)を超過すると削減され始め、夫婦合算申告者については$7万5千(独身者については$5万5千)を越すと全く取れなくなる。(2003年以降はこの削減の幅もインフレ調整される予定である。) 

8.ホームオフィス費用控除の適用範囲拡大--1998年1月1日以降適用 

 自営業者の場合、自宅をオフィスにしていても、そこを主たるビジネスの場所(principal place of business)として恒常的に使用していないと、自宅の維持費用(電気・ガス、不動産税、減価償却費など)を費用として計上出来ない規則になっているが、相当程度の事務作業あるいは管理サービス(substantial administrative or management services)はその対象として認められることとなった。 

9.自営業者の健康保険掛け金を損金として計上出来る額の増額--1998年以降適用 

 自営業者が保険会社に支払った健康保険掛け金については、現在は税務申告書の所得調整項目として年間支払い額の30%を損金扱い出来るが、この損金扱い出来る額が、1998年と1999年は45%2000年は50%、と増加され2007年には100%損金扱い出来ることとなった。 

10.私的財団への株式寄付に伴う市場価格での寄付損金計上の延長--1997年6月1日から1998年6月30日の期間を追加 

 含み益のある適格株式の私的財団への寄付に関し、市場価格(簿価でなく)での寄付金損金計上が今年5月一杯までの寄付について許されていたが、これが来年6月30日まで延長されることとなった。 

11.退職年金の超過引き出しに対する15%のエキサイス税の廃止--1997年以降の引き出しに適用 

12.クレジット・カードによる税務申告書提出に伴うIRSへの税支払いが可能となる--1998年の税務申告時期から 

相続・贈与関連 

1.遺産・贈与税の計算における控除額(estate and gift unified credit)の増加 

 1998年から2006年にかけて、遺産・贈与税の計算における控除額が現行の$60万から$100万まで増加することとなった。但し、2006年以降は$2、410万以上の譲渡に対してはこの控除が与えられない。 

2.非課税贈与として認められる年間$1万、世代飛び越え(generation-skipping)譲渡に関連する控除額$1百万、について1999年以降はインフレ調整による増額 

3.家族所有のビジネス(family-owned business)の適格相続人への譲渡に対し、$130万の控除--1998年1月1日以降の譲渡に適用 

 この$130万の控除は、上記1.の控除額を含む。一方、適格相続人とは、被相続人の家族の一員であり、被相続人の死亡以前の10年間に積極的にその家族ビジネスに雇用されていた個人を指す。 

法人関連 

1.繰越し損失の適用規則変更--1998年8月6日以降に開始する税務年度から適用 

 現行では、ある年度における法人の欠損は、まず過去の3年度に繰り戻しして使用し、それでも使用し切れない部分は将来の15年度に繰り越して使用するのが原則となっているが、新しい法では1998年8月6日以降に開始する税務年度から生じた欠損については、過去への繰り戻しが「2年」に短縮され、将来への繰り越しが「20年」に延長されることとなった。 

2.ビジネス関連の税額控除の繰り越し規則変更--1998年1月1日以降に開始する税務年度から適用 

 ビジネス関連の税額控除の繰り戻しは「1年」に限定され、繰り越しは「20年」へと延長されることとなった。 

3.法人AMT税計算規則、小規模企業に非適用--1998年1月1日以降に開始する税務年度から適用 

 1997年以前の3年間での平均売グロス受取り収入が$5百万以下[979月星野訂正]であり、1998年以降の資産が$7百50万以下[979月星野訂正]である「小規模企業」に対しては、法人の代替ミニマム税(AMT=Alternative Minimum Tax)の計算が免除されることとなった。 

4.法人AMT税計算に伴う減価償却別計算の廃止--1999年1月1日以降に使用開始の資産から適用 

増税をもたらす主要項目 

税の増加が予定されている主な項目として、以下がある。

oエキサイス税ーー空港・空路切符に対する税、たばこ製品に対する税

o法人税ーー欠損金、ビジネス税額控除の過去への繰り戻し許容期間の短縮

o雇用税ーー0.2%の割合で課される連邦失業保険臨時追加税の20071231日迄の延長

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ニューヨーク州予算、州議会を通過し成立 

連邦での納税者救済法の審議とほぼ時を同じくして、ニューヨーク州でも予算案の審議が進行し、8月3日、4日には議会を通過し、11日にはパタキ州知事の署名を得て正式に成立しました。予算には減税措置が含まれていますが、その主要項目は以下の通りです。 

販売税(Sales Tax)(1)1999121日以降は、一品当たり$100未満の「衣類」に対する州からの販売税4%部分は撤廃、 (2)NY州としては、実施に先立ち$100未満の「衣類」に対する販売税免除を試験的に今年91日から7日迄と、来9891日から7日迄の期間に行なう(注記:今年の分については、既にニューヨーク市、ウェストチェスター郡もその期間は非課税とすると決めたので、衣類の販売税は0%となる)、 (3)郡や町なども衣類に対する販売税免除を決定出来るが、そうしなければならないとする義務はない。

不動産税(Property Tax): 持ち家所有者、コーオプ所有者、コンドミニアム所有者に対し、不動産税に含まれている学校税(school tax)部分について平均27%の減税(高齢者については45%の減税)を実施する。1998年から徐々に実施され2002年に完全実施となる。

遺産・贈与税(Estate and Gift Taxes): 199811日以降、資産価値が$30万以下の遺産については、統一控除額(unified credit)を増額することにより遺産税を免税とする。

グロス受取り税(Gross Receipt Tax):(1)電力会社と電話通信会社のグロス受取り収入に対して課せられる州のフランチャイズ税が、3.5%から2.5%へと削減される。(1998年から徐々に削減し、200011日には完全に削減となる。)(2)地元の電話会社およびその他の送信会社グロス受取り収入に対して課せられる州のフランチャイズ税が、0.75%から0.375%へと削減される。(200071日から実効。)(3)運送会社のグロス受取り収入に対して課せられる州のフランチャイズ税が、0.6%から0.375%へと削減される。(200071日から実効。)

ニューヨーク市居住者個人所得税(New York City Personal Income Tax):NY市居住者に対する所得税税率を10%削減。(1998年より徐々に実施し、200011日以降は完全実施。)

銀行の欠損(Bank Tax Net Operating Loss): 銀行については、ある年度の欠損は他の年度への繰戻し、あるいは繰越しが許されていなかったが、200111日以降に開始する年度に生じる欠損からは、他の法人と同じく、他の年度の所得を相殺するため使用出来ることとなった。(<---邦銀の米国支店、現地法人には恩恵となると思われる。) 

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Copyright © 1998 Shoji Hoshino, CPA
最終更新日: 2008/01/14